2019.03.11
先月2月27日に和歌山県紀の川市粉河の東町地区に飾り幕の納品に行ってまいりました。
この飾り幕は、だんじりの行燈(あんどん)部分に巻かれるため、「行燈幕」と呼ばれています。図柄は『波に唐獅子乃図』(大正時代製)です。長年の使用で傷みが激しかった為、今回 文化庁の補助事業 『紀の川市文化遺産観光復興地域活性化事業』の一環で、約5ヶ月をかけて当店で大改修させていただきました。
改修前の幕の状態です。
劣化の少ない金糸、正絹の撚糸が切れないように慎重に駒に巻き取っていきます。
岩の刺繍は、下地から生地ごと切り離し、綴じ直しと補修を行い、新しい羅紗生地に載せ替えをします。
幕の解体時に、波の元の色が「新橋色」と「白藍色」だと判明しましたので、同じ色になるように、正絹を別染めいたしました。
新しい羅紗生地に古い金糸と正絹の撚糸を使って、波の復元刺繍をしているところです。
解体時に、ヘリと乳の元の色が「群青色」だと判明しましたので、同じ色になるように、羅紗生地を別染めいたしました。
修復を終えた唐獅子を羅紗生地に載せ、位置を確認したあと渦状の波の刺繍をしているところです。古い刺繍の波の動きや癖を意識しながら復元をしていきます。
波の刺繍が完成し、水玉と岩を取り付けているところです。写真で位置を確認しつつ、ずれがないように慎重に作業をすすめていきます。
刺繍作業が終了いたしました。幕を大台から下ろし、これから仕立ての作業に入ります。
納品時の様子です。地元の方と市役所の職員さん、学芸員の方も来られて修復箇所の説明と最終の点検をしていただき、無事に納品を終えることが出来ました。
※粉河東町地区の行燈幕は、新年号元年7月28日(日)本宮でお披露目されます。
納品が終わり、粉河の地元で行われている「とんまか雛通り」というイベント、粉河大門前の旧旅館「三笠館」にて、飾り幕が展示されていると伺いましたので見学に行って参りました。
北町の緞帳幕 「佐久間玄蕃太閤本陣乗込乃図」(幕末~明治初期製)岩田虎市 作
北町の緞帳幕
北町の傘幕 「波に雲龍乃図」(幕末~明治初期製)岩田虎市 作
北町の行燈幕 「富士の巻狩り乃図」(大正時代製)
今回、特別に「上之段地区(上之町)」の年代物の飾り幕も展示されていましたので、掲載させていただきます。
上之段の緞帳幕 「加藤清正 虎退治乃図」(幕末~明治初期製)岩田虎市 作
上之段の傘幕 「八岐大蛇乃図」(大正時代製)
大蛇の尾の先には「天叢雲剣」がありました。
上之段の行燈幕 「素戔嗚尊と櫛名田比売乃図」(大正時代製)
「素戔嗚尊」
「櫛名田比売」
第5回『とんまか雛通り』 2019年2月23日(土)~3月24日(日)まで開催されています。
三笠館の見学は期間中、土・日・祝のみです。