2017.03.01
飾り幕の下地などに使用する赤い毛織物のことを「猩々緋羅紗 (しょうじょうひ らしゃ)」と呼びます。猩々緋は臙脂(えんじ)色と区別するために付けられた色名で、わずかに黒味を帯びた鮮やかな赤紫色。ポルトガルやスペインとの南蛮貿易の舶来品で伝来した色で、室町時代後期より流行しました。特に戦国時代の武士は南蛮貿易で手に入れた猩々緋羅紗の生地で陣羽織など仕立て、珍重されました。
土生祭り(猩々緋羅紗陣羽織)
猩々緋という色名の由来は、中国古典に登場する架空の動物「猩々」の体毛の色が鮮やかな赤色・緋色だったため「猩々の生血で染めたからだ」などと人々が揶揄し、この名前で呼びならわすようになりました。もちろん、これは俗説であり、実際の原料は昆虫のケルメスまたはコチニールカイガラムシ(エンジムシ)によって染めたと考えられています。
猩々(和漢三才図会より)
猩々は顔が赤いという特徴から、酒好きで陽気な生き物だと伝えられており、また能の演目の猩々は「神の化身」の様な扱いになっています。各地の祭礼にも魔除けや厄払いの象徴として、猩々の人形や刺繍の題材など、数多く使用されています。
遠い異国から伝わった猩々は、日本で独自に、姿かたちを変え、不思議な存在で日本の祭りに華を添えています。
御坊祭り(猩々の人形)
丹波篠山祭り(猩々の人形)
丹波篠山祭り(猩々の刺繍)
秩父夜祭り(猩々の刺繍)